プチ・ベーシックインカム 〜デジタル商品券導入による景気刺激〜

近年よく議論されるテーマに、毎月一定額を国民全員に支給するベーシックインカム(以下BI)がある。
現時点では思考実験の域を出ないが、実現すれば失われた30年を抜け出す切り札になり得ると考える。

一口にBIといっても、人によってイメージするものが違うので、まず定義をはっきりさせたいと思う。
ここで言うBIは経済政策としてのBIである。生活保護や年金などの福祉政策を目的としたものではなく、行政のスリム化を狙ったものでもない。それらは別途考えるとして、以下はあくまで景気刺激を目的とした政策である。

過去に何度か景気対策を目的としたバラマキが行われてきた。地域振興券(1999年)、定額給付金(2009年)、特別定額給付金(2020年)などである。それらは景気対策として十分な効果があったとは言い難い。理由は明白で、貯蓄や生活必需品の購入に回るからだ。いきなり10万円もらっても、先行きが見通せない中で大盤振る舞いしないだろう。需要を先食いするだけで、個人消費の喚起にはなり得ない。

そこで、以下の制約のあるデジタル商品券を毎月配布することを提案したい。
1) 商品券は1万円相当額
生活費にはとても足りないが、あくまで景気刺激に必要な最低額。一般的に議論される数万円〜数十万円のBIよりずっと低予算で済むので財源のハードルは低い。

2) 有効期限は支給日から1年間
たとえば2023年5月に支給されたBIは2024年4月末まで、2023年6月分は2024年5月末で失効といった具合に有効期限を設ける。

3) 購入できる商品は単価が額面(1万円)以上の商品に限る
200円の牛乳を50本とか、12円のうまい棒833個とか、1万円以下の商品の購入には使用できない。5万円の腕時計の1万円分を商品券で支払う、1年分の商品券12万円分でスマホを買うといった利用を想定。

4) 金券、金融商品、公共料金は対象外
積立投信の毎月の支払いとか、通勤定期券の購入には使用できない。

5) 商品券は原則としてスマホアプリで毎月支給
・PayPayのようなQRコードを読み取る方式を想定。商品券の配布コストを抑える。
・アプリはマイナンバーカードによる認証で不正受給を防止する。
NFC対応のスマホを持っていない低所得層には役所でQRコードを印字した紙の商品券を支給。
・携帯ショップのスマホ教室に補助金を出して、デジタル機器に不慣れな高齢者対策とする。
・デジタル商品券の読み取り機器購入、更新費用は全額税控除対象とし、小売店の負担をなくす。

以上の仕組みで、個人消費を喚起する。
有効期限と単価の制約で貯蓄や日用品の購入に回ることを防ぐ。毎月支給の恒久的な制度なら需要の先食いも起こらない。
支給額は毎月1万円としたが、インフレなど社会情勢に応じて適宜見直すことを想定。

実現すれば、強力な景気刺激策になるのではないだろうか。