青函共用走行問題:私案②貨物新幹線

前回の記事の冒頭に書いた通り、本命は貨物新幹線。
三線軌である限り除雪の問題は残るし、函館~長万部間の並行在来線問題もある。
それを解消するには、在来線を廃止するしかない。


在来線廃止後の貨物輸送は新幹線か、海上輸送で担うことになる。
後者は技術的ハードルは低いものの、鉄道貨物全体への影響、
トラックドライバーの不足で物流全体への影響が大きい。
JR貨物どころか日本の衰退を加速させてしまう危険性がある。
前者の貨物新幹線は逆に、技術的なハードルこそ高いものの、
実用化すれば国内の物流に革命をもたらす可能性を秘めている。


ところで、近年「貨物新幹線」という言葉が独り歩きしているように思われる。
JR東日本が旅客新幹線の空席を活用し、生鮮食品を運ぶサービスを始めたが、その延長で専用車両にパレットを積み込む方式の「貨物新幹線」を始めようとしている。
これは従来のコンテナ貨物とは全く別物であり、輸送力が比較にならないほど小さい。
本記事の「貨物新幹線」とはコンテナ輸送の貨物列車であり、在来線貨物の代替となり得る列車を指す。


具体的には以下の通り。
1) 運行区間:青森信号場~札幌貨物ターミナル駅
青森信号場及び札幌貨物ターミナルで在来線貨物との積み替えを行う。
旅客がいない、新幹線には踏切がない特性を踏まえ、無人運転(自動運転)として、運行コストの削減を図る。
新幹線の運行ルールに則り、0時~6時は運行を休止する。
青森~札幌間の所要時間が現行の8時間程度から3時間程度と半分以下に短縮するため、深夜帯に走行する必要がなくなり、前述の無人運転と合わせて運行コスト削減に寄与する。


2) 貨車
20m車20両編成。
在来線貨物の積み替えに対応するため、緊締装置など現行のコキ100系と互換性を持たせつつ、貫通幌を横に寝かせたような蛇腹状の防風構造を設ける。積み下ろし時は防風幌を畳み、走行時は貨車を覆うように広げて旅客新幹線とのすれ違いに耐え得る構造とする。
新幹線の軸重制限のため、アルミ、カーボン等の素材を多用。形状を工夫し、強度と軽量化の両立を図る。


3) 動力車(≠機関車)
H級(8軸)を貨車前後に連結。
TGVのようにプッシュプル運転で貨車20両と合わせて1編成を構成する。前後2両(4車体)として機器を分散、軽量化することで、軸重16t以下とする。
営業最高速度は160km/h。北海道新幹線の待避駅(信号場)間で旅客新幹線から逃げ切れる最低限度の速達性能とする。


4) 地上設備
・青森信号場
貨物新幹線と在来線貨物の積み替え設備を設ける。
上下二段構造とし、上段の新幹線と下段の在来線の積み荷をロボットアームで自動で積み替え、省力化と積み替え時間の短縮を図る。


・青森信号場~新青森駅付近
貨物新幹線専用線(単線)を設ける。


・共用区間新中小国信号場木古内駅
狭軌を撤去する。
奥津軽いまべつ駅構内及び湯の里知内信号場狭軌待避線は標準軌に改軌し、貨物新幹線の待避線に用いる。必要に応じて待避線を延伸する。


長万部駅付近
貨物新幹線の待避線を設ける。


・札幌車両基地(新幹線)~札幌貨物ターミナル駅
貨物新幹線専用線(単線)を設ける。


・信号関係
旅客新幹線は25m車10両編成(E5系編成長253m)だが、貨物新幹線は貨車20両+動力車2両(450m程度)のため、必要に応じて閉塞割を変更する。


長くなったが、貨物新幹線の概要は以上。
技術的なハードルが高いため、現時点は鉄ヲタの妄想かもしれないが、青函共用走行問題や函館~長万部間の並行在来線の議論をみる限り、貨物新幹線の開発は必要だと考える。それも、旅客新幹線ベースの専用車両にパレットを積み込むようなものでお茶を濁すのではなく、在来線コンテナ貨物の代替となり得る列車が望ましいのではないだろうか。